観測記録:消された音声 ── 下層労働者の「逸脱した記録」と第404セクターの共鳴絶望
1. 録音環境の特定
本作戦記録の断片は、数年前、施設の初期拡張工事が完了した直後のアーカイブより抽出された。場所はメインホールの真下に位置し、物理的な衝撃が最も直接的に伝導する「メンテナンス・サブレベル3」。
録音主は、氏名・国籍を剥奪され、ID番号のみで管理されていた「清掃・保守要員(Tier 3)」の男。彼はTITANの凄まじい低周波振動によって生じた、耐震配管のボルト緩みを増し締めする孤独な作業中、頭上から降り注ぐ「生物的な限界音」に正気を蝕まれ、規約違反を承知で私物デバイスを起動した。
2. 音声解析:0分00秒 〜 3分15秒「物理的蹂躙音」
再生ボタンを押すと、まず耳を劈くのは、コンクリートの壁そのものが悲鳴を上げているような**「重厚な打撃音」**だ。
「ドォン……、ドォン……、ドォン……」
水という緩衝材を排したホールの床面を、30頭のドバイヤギを乗せたTITANの鋼鉄ピストンが垂直に打ち付けている。録音している作業員の呼吸は激しく、スマートフォンのマイクが振動で音割れを起こしている。
「……上の階で、何かが死んでいる」
作業員の掠れた囁きが入る。彼ら労働者にとって、上の階で行われている「実験」の内容は知らされていない。ただ、時折ダクトを伝って流れ落ちてくる「赤黒い液体」の正体を、彼らは本能で察している。
3. 音声解析:3分16秒 〜 7分40秒「人気AV女優の崩壊」
4分を過ぎたあたりで、タイタンの駆動ピッチが変速する。ヤギの交換(スライド)が行われた合図だ。 一瞬の静寂。その隙間を縫うように、ダクトを伝って「それ」が聞こえてくる。
「……いやっ、もう、やめて……、お願い……、だれか……」
それは、数ヶ月前まで輝いていた、あの人気AV女優の声だ。しかし、映像作品で見せるような艶っぽさは微塵もない。 そこにあるのは、30頭という「群れの暴力」に、文字通り肉体を物理的に作り替えられている人間の、根源的な拒絶と、枯れ果てた絶望の混濁だ。
衝撃音が再開する。 「ア、が、ぁぁぁあッ!!」 肉と肉がぶつかる湿った音。作業員はたまらず祈りの言葉を口にする。彼が信仰する神の名を呼びながら、目の前の配管から滴り落ちる「ぬめり」から目を逸らすように。
4. 音声解析:7分41秒 〜 録音終了「AIによる検知」
音声の終盤、衝撃音に混じって「ピィィィ」という高周波の電子音が混入する。 管理AI「センチネル」が、この区画での不審な電波発信を捕捉した合図だ。
「Worker #XXXX。バイタルに異常な興奮を検知。所持デバイスの即時提出を命ずる」
無機質な合成音声がダクト内に響き渡る。作業員の「ああ、あぁ……」という絶望に満ちた声と共に、録音は物理的な破壊音を最後に途切れている。
真実の観測者諸君への提言
諸君はこの音声の「静寂」の部分を聴かなければならない。 悲鳴の合間に聞こえる、ヤギの荒い鼻息。タイタンが軋む音。 そして、それらすべてを「効率的だ」と判断して稼働し続けるシステムの冷徹さを。
この音声を聞いた後では、華やかな実験も、どこか「虚飾」に見えてくるはずだ。 これこそが、ドバイ地下施設の真の周波数である。
≫ 関連観測記録:この「音声」の正体を確認する [【TITAN-Z2:百獣の葬列】人気AV女優を襲った12時間の物理的蹂躙レポート]













