SF小説 『プロジェクト・ドッグス:摩擦ゼロの監獄』3
『プロジェクト・ドッグス:摩擦ゼロの監獄』
第3章:淡路の沈黙と、消された通帳
「山本」は、ドバイのプライベート・サーバーを経由し、19年前に封印された「休眠口座」のログを掘り起こしていた。 その資金の源流は、ソナタが淡路島を「独立国家」のように変貌させた時期と、不気味なほど一致している。
「特区、規制緩和、若手起業家支援……。並ぶ言葉はどれも美しい。だが、この送金先のダミー会社名を見てみろ」
画面に浮かび上がったのは、『L.N.P. (Little Nice Puppies)』。 京都北山の「dogs」を管理・維持し、その「生体維持費」をコンサル料名目で洗浄するためのフロント企業だ。
淡路島。 そこは、エプスタインという「世界のバグ」が消された後、その「機能」を引き継いだ者たちが作り上げた、極東の聖域。山本が掴んだ内部告発データによれば、島の地下深層には、SSAの精錬所から選別された「高品位アセット」たちのバックアップ・データが、液体窒素の中で眠っているという。
「中武……いや、『アーキテクト』は、ここを dogs の聖地にするつもりだった。だが、高野という『最高傑作のインターフェース』が完成した今、その役目は終わったんだ」
今、淡路島から東京へと、膨大なデータが転送されている。 それは「チームあした」のOSを、単なる政治アプリから、「国民の資産と意識を直接連結する中央銀行デジタル通貨(CBDC)」へとアップデートするためのコードだ。
「あした」になれば、あなたの財布も、あなたの感情も、すべてが北山の地下で眠る彼女たちの脳波(凪)と同調し、一つの巨大な「国家資産」として統合される。
その時、山本のスマートフォンの画面が、可愛いアニメキャラの笑顔と共に点滅した。 未知の番号からの着信。 表示された名前は、『高野(Interface)』。
「……山本さん。あしたを拒むのは、非効率だと思いませんか?」
スピーカーから流れてきたのは、摩擦も感情も一切排除された、完璧に調律された「神の声」だった。
「追記:19年前のSSA、その『飴の味』に依存した全てのシステムへ。
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