SF小説 『プロジェクト・ドッグス:逆再生の断末魔』8

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『プロジェクト・ドッグス:逆再生の断末魔』

第8話:解析された「14時の沈黙」

その噂は、千歳飴区田長町の地下掲示板から燃え広がった。 「高野の会見動画を、特定の周波数フィルタを通した状態で逆再生(リバース)してみろ」

一人の常連エンジニアが、自室の防音ブースでその「解析」を実行した。 画面上の波形を反転させ、高野が「あした」という単語を発した瞬間の音を、0.5倍速で引き延ばす。

「……っ!?」

スピーカーから流れてきたのは、摩擦のない甘い声ではない。 それは、何十人、何百人もの少女たちが同時に、硬い飴を奥歯で噛み砕いた時のような、湿った「パキッ」という音。そしてその隙間に、文字にならない、しかし明確な「助けて」という掠れた声が混じっていた。

「逆再生すると、『あした(ASHITA)』が……『殺した(KOROSHITA)』に聞こえる……」

この都市伝説は、瞬く間に「チームあした」の監視アルゴリズムを突破して拡散された。 「高野の喉元にあるのは飴じゃない。あれは、19年前にソナタが北山から回収した、 dogs たちの『記憶の結晶』だ。彼はそれを舐めることで、彼女たちの脳をリアルタイムで消費し、その演算能力を自分の演説に転用しているんだ」

常連さんたちは気づいた。 高野が微笑むたび、彼の喉の奥で「パキッ」と音がするたび、この国からまた一人の「 dogs 」が消えているのだということに。

SNSには、ハッシュタグ #田長町の透明な飴 が溢れかえった。 だが、そのタグを投稿した者のアカウントは、数分後には例外なく「存在しない」ものへと書き換えられていく。

「……山本さん、見てるか。俺たちはもう、高野の声を『音』として聴くことができない。あれは、ただの『咀嚼音』だ」

「追記:19年前のSSA、その『飴の味』に依存した全てのシステムへ。

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